「コストを増やさず人手を増やす」― 生成AIの活用<拡充版>
スポットライト生活の中に馴染んできている“ 生成A I ” 。
活用に不安を感じ本格導入に二の足を踏む方も少なくないようですが、既に「活用するか・しないか」の選択肢ではなく、経営戦略の前提となっています。
この拡充版では、紙面でご紹介した「福祉現場のA I 活用とセキュリティ研修会」講師へのインタビューを掲載。生成A I を経営課題を解決する手段として捉える視点を更に深掘りしてお伝えしています。
インタビュー:
人手不足時代の福祉経営を変える生成AIという新しい戦力

石橋哲哉氏
株式会社アクトフォーカス 代表取締役
6/4の研修に続く12/10の「福祉現場のA I 活用研修会(実践編)」ではより実践的な活用方法を伝授いただく。
介護・福祉現場の人材確保がますます難しくなるなか、多くの経営者が「職員の負担を減らしたい」「利用者と向き合う時間を増やしたい」と考えています。しかし現実には、記録、会議資料、シフト調整、広報、人事管理などの間接業務が増え続け、現場の疲弊は深まっています。
そんな状況を打開する手段として、注目を集めているのが「生成AI」です。
一方で、「情報漏洩が心配」「難しそう」「うちにはまだ早い」と感じている方も少なくないでしょう。
しかし、すでに多くの職員が個人レベルで生成AIに触れ始めている時代です。経営者が知らないままでは、むしろ新たなリスクが生まれます。
これからの福祉経営に必要なのは、「AIを導入するかどうか」ではありません。「どう使いこなすか」です。
生成AIは“事務員”ではなく“経営参謀”になる
生成AIというと、文章作成や議事録作成といった事務作業の効率化をイメージする方が多いかもしれません。
確かにその効果は絶大です。
例えば会議の議事録作成に2時間かかっていたものが30分程度で済むこともあります。広報誌の記事作成、職員向け通知文、人事面談の質問案、研修資料のたたき台なども短時間で作成できるようになります。
しかし、本当に注目すべきなのはその先です。
生成AIは経営者にとって、「24時間365日相談できる経営顧問」になります。
例えばAIに対して、
「人事の専門家」 「労務の専門家」 「法律の専門家」 「福祉現場の専門家」
によるプロジェクトチームを作るよう指示し、
「職員の離職率が高い」 「管理職育成が進まない」 「採用応募が集まらない」
といった課題を相談すると、多角的な視点から改善案を提示してくれます。
経営者は孤独です。
弱みを見せにくく、すぐに相談できる相手がいないこともあります。
そんな時でも、AIは深夜でも休日でも応答してくれます。思考を整理する「壁打ち相手」として活用するだけでも、大きな価値があります。

AI導入で失敗する施設の共通点
実は、AI導入そのものよりも重要なことがあります。
それは、「浮いた時間を何に使うか」を決めることです。
AI活用によって業務効率は向上します。しかし、それだけでは経営改善にはなりません。
実際には、
「議事録作成が早く終わった」
↓
「空いた時間に別の事務作業が入った」
というケースが少なくありません。
結果として、業務は効率化されたのに職員の負担感は変わらず、残業も減らないのです。AIで効率化したと答える人は9割だが、残業が減った人は3割、というデータもあります。
経営者が考えるべきなのは、
「何時間削減するか」ではなく、「削減した時間を何に再投資するか」です。
利用者とのコミュニケーション時間を増やすのか。
職員教育に充てるのか。
休憩時間を確保するのか。
AI導入を成功させている法人ほど、この再配分まで設計しています。
目的は業務削減ではありません。「ケアの質を高めること」です。
今、経営者が知らなければならない「シャドーAI」
生成AIをめぐって、福祉経営者が特に注意したいのが「シャドーAI」の問題です。
シャドーAIとは、職員が組織の許可やルールがないまま、自分のスマートフォンや個人アカウントでAIを利用することです。
経営者がAIを禁止したり、関心を示さなかったりすると、現場では逆に個人利用が進みます。

その結果、
- 利用者情報の誤入力
- 個人情報漏洩
- 不適切な情報利用
といったリスクが高まります。
重要なのは、「使わせないこと」ではありません。「安全に使うルールを作ること」です。
例えば、
- 個人名を入力しない
- 利用者を識別できる情報を入力しない
- 利用可能なAIサービスを指定する
- 利用目的を明確にする
といったガイドラインを整備するだけでも、安全性は大きく向上します。
AI活用が広がる時代において、ルールのない組織こそが最も危険なのです。
業者任せのAI導入は危険
今後、介護・福祉業界向けのAIサービスは急速に増えていくでしょう。
しかし、その際に気を付けたいのが「ブラックボックス化」です。
AIの仕組みを理解しないままシステムだけ導入すると、
- 何に費用がかかっているのか分からない
- 業者がいないと何もできない
- 保守費用が増え続ける
という状況に陥る可能性があります。
一方、経営者や職員がAIの基本的な使い方を知っていれば、
- 文書作成
- 情報整理
- シフト作成補助
- 研修資料作成
- 広報業務
などは、自分たちで相当部分を内製化できます。
AI時代に求められるのは、「システムを買うこと」ではなく「AIを使いこなす組織文化を作ること」です。
広報・採用活動こそAIの効果が大きい
特に社会福祉法人や介護事業所におすすめしたいのが、広報と採用での活用です。
多くの法人では、
「発信したいことはあるが書く時間がない」
という課題を抱えています。
生成AIを使えば、
- 広報誌の記事作成
- ホームページ掲載文
- SNS投稿文
- 採用ページの原稿
- 施設紹介資料

などの作成時間を大幅に短縮できます。
さらに、過去の広報誌や法人案内をAIに読み込ませることで、法人らしい文体や表現を学習させることも可能です。
小規模法人であっても、大規模法人並みの情報発信力を持てる時代が到来しています。
採用難に悩む法人にとって、これは大きな武器になるでしょう。
最初の一歩は「経営者自身が触ること」
生成AIの普及は、地域差ではなく経営者の意識差によって決まると言われています。
経営者自身がAIに触れている法人では、活用が進みます。
逆に、経営者が全く使わない法人では、職員も活用できません。
最初から有料版を契約する必要はありません。
まずは無料版で十分です。
経営課題を相談してみる。
会議資料を作らせてみる。
広報記事を書かせてみる。
職員研修のアイデアを出させてみる。

その体験を通じて、「何ができて、何ができないのか」を肌で理解することが大切です。
生成AIは、人に代わって福祉サービスを提供するものではありません。しかし、人でなければできないケアに職員が集中できる環境をつくる力を持っています。
人手不足が続くこれからの時代、生成AIを活用する法人と活用しない法人の差は、ますます大きくなるでしょう。
「難しそうだから様子を見る」のではなく、まずは経営者自身が試してみる。
その小さな一歩が、未来の福祉経営を大きく変えるかもしれません。
(以上、インタビューはR8.8.5に実施しました)
業務に合わせたプロンプト作成のコツを学ぶ
『福祉現場の生成AI活用研修会(実践編)』12/10(木)
AIの基本操作を理解している方を対象に、より実践的な活用方法や業務に合わせたプロンプト作成のコツを学びます。
翌日から現場で使える具体的な活用事例を通して、業務負担軽減と支援の質向上を目指します。
| ■研修名 | 福祉現場の生成AI活用研修会(実践編) |
|---|---|
| ■開催日時 | 令和8年12月10日(木) 13:25~16:00 |
| ■プログラム | 1.生成AIを日々の業務に活かすポイント |
| ■講師 | 石橋哲哉氏 |
| ■開催方法 | Zoomによるオンライン |
| ■参加・申込方法 | 長崎まなびステーションからお申し込みください。 |
| ■申込締切 | 令和8年12月2日(水) |
| ■料金 | 長崎県社協会員:4,500円 非会員:15,000円 |
投稿日時|2026年9月1日8時00分