カスタマーハラスメントへの対応<拡充版>

コラム・読み物

今年(2025年)6月に可決・成立した改正労働施策推進法。
主な改正点は、労働現場で深刻な「ハラスメント対策の強化」で、国の法律で初めてカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)防止に向けた対応策が示されました。
2025年11月17日に行われた厚生労働省の諮問機関である労働政策審議会の分科会(雇用環境・均等分科会※)では、カスハラへの具体的な対処例を盛り込んだ「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針」の素案も提示され、改正法は2026年10月1日に施行される見込みです。
これまで推奨にとどまっていたカスハラ対策が、事業主の義務となります。
2025年12月号の「ながさきのふくし」では、実態調査報告書から見た福祉業界でのカスハラの現状をもとに、現時点で取り組むべきことを特集しましたが、ここでは上記指針案も確認しながら改めてご紹介します。
 (※第87回労働政策審議会雇用環境・均等分科会 資料等はこちら(厚生労働省ウェブサイト)

実態調査報告書から見えるもの

令和5年度 厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」では、過去3年間のカスハラに関する相談の有無・相談件数の推移が報告されています。
「相談あり」「相談件数が増加している」のどちらも医療・福祉業界の割合が最も多いことが報告されています。

過去3年間に相談があった企業における顧客等からの著しい迷惑行為に関する相談件数の推移(業種別)

※グラフでは、報告書で「顧客等からの著しい迷惑行為」とされているものを「カスハラ」と表記しています。
「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」についてはこちら(厚生労働省ウェブサイト)

あらためて「カスタマーハラスメント」とは?

福祉施設・事業所で考えると、利用者やその家族、取引先などの言動が、社会通念上許容される範囲を超え、職員の就業環境を害することです。
前述の指針の素案では
①顧客等の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの
と定義されています。
①の「顧客等」については、今後利用する可能性のある者も含む」とされています。
②③については、対面だけでなく、電話・メール・SNSなども含まれます。

苦情や要望のすべてが該当するわけではなく、正当な申入れは含まれません。
正当な申入れ(正当なクレーム)は、要求の「内容」も「手段・態様」も正当なもので、接客・サービス等の向上に繋がりうるものであり、適切に対応するべきものです。
不当なクレームは、要求の「内容」「手段・態様」のいずれか一方あるいは双方が不当なもので、拒絶する必要があります。
要求を伴わず嫌がらせを目的とした行為は拒絶すべきは明らかです。

クレームとカスハラの図

また、障害者から労働者に対して、
 ・障害者差別解消法で禁止されている不当な差別的取扱いをしないよう求めること
 ・社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること
自体は、職場におけるカスハラには当たらず、同法に基づき、その実施に伴う負担が過重でないときは、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないことに留意が必要です。

典型的なカスハラ行為の例

<言動の内容が不当>
●そもそも要求に理由がない・サービス等と全く関係のない要求
 ・性的な要求、職員のプライバシーにかかわる要求
●過剰な要求
 ・契約を超えるサービス要求、サービス内容と無関係の不当な損害賠償要求
<手段や態様が不当>
●身体的・精神的な攻撃
 ・殴る、蹴る、物を投げる、唾を吐きかける
 ・SNSへ悪評投稿することをほのめかす
 ・インターネット上に職員のプライバシーに係る情報を投稿する
 ・人格否定、差別侮辱、土下座強要
 ・大声で威圧
 ・執拗な行為・拘束的な行為…長時間居座り、電話で拘束、メールの大量送信

カスハラがもたらす影響

事業主がカスハラへの対応を十分に行わない場合、次の影響・懸念があります。

①安全配慮義務を果たしていない場合、民事訴訟の対象となる可能性がある
②ハラスメントに適切に対応せず、職員が不満や精神的ストレスを抱え込むと、
 ご利用者への報復(虐待)に繋がる可能性がある
③職員の離職に繋がる可能性がある

(厚生労働省R4障害福祉の現場におけるハラスメント対策 管理職向け研修手引きより)

すべて経営的な損失に繋がるものです。
注目していただきたいのは③で、(公財)介護労働安定センターの令和6年度介護労働実態調査報告書で、「直前の仕事(介護関係)を辞めた理由」として、「利用者や家族からのカスハラから守る取り組みをしてくれなかった」こともあげられています。
『職員を守れない施設から職員は離れていく』という状況が垣間見えます。

事業主が取り組むべき措置

まずは組織のトップが、カスハラから組織として職員を守るという基本方針・基本姿勢を示すことが必要です。
そして、職員の対応の在り方や手順を定め、それを職員へ周知・教育し、カスハラ対策を実効性のあるものへ育てることで、職場環境の向上、法人・事業所の価値向上につなげていただきたいと思います。

基本方針・基本姿勢の明確化と周知、職場内対応ルールの職員等への教育・研修

 ・「毅然と対応し、職員を守る」方針の職員・利用者双方への周知
 ・カスハラの内容やそれらへの対処の内容の職員(管理監督者を含む)への周知
 ・カスハラへの対処内容を周知するための研修の実施

相談対応体制の整備

 ・相談窓口の設置
 ・担当者の設置
 ・相談対応の研修の実施

事後対応 ― カスハラの相談があった際の迅速かつ適切な対応・手順の策定

 ・事実関係の迅速かつ正確な確認
 ・カスハラが確認できた場合、被害者に対する配慮のための速やかで適正な措置
 ・方針等の再周知と再発防止策の徹底(これは、カスハラが確認できなかった場合も)

悪質事案への対応

 ・特に悪質なものへの対処方針の職員への周知
 ・その対処ができるよう、関係部門間の連携体制の整備

これらと併せ、カスハラの相談への対応・事後の対応にあたっては、相談者のプライバシーを保護すること、プライバシーには性的指向・ジェンダーアイデンティティ等の機微な個人情報も含まれることが示されています。

また、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)には、自らも、カスハラ問題に対する関心と理解を深め、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払うように努める義務があります。
これは労働者についても同じことが求められており、そのうえで事業主が講じるカスハラに関する措置に協力するように努める義務があります。

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投稿日時|2025年11月26日11時04分