災害 その対応と備え ー 能登半島地震への支援から<拡充版>

特集記事

令和6年元旦に発生した能登半島地震。1,500人を超える人的被害、8万棟を超える住宅被害が報告されており、被災した福祉施設は石川・新潟・富山の3県で最大357施設にのぼります。
現地での支援活動レポートとともに、長崎県内での備えについて紹介します。
※上記数字は、全社協及び厚労省ページより抜粋

当座の生活費の貸付+総合的な相談支援で被災者を包括的に支える―県社協職員レポート

令和6年能登半島地震により被害を受けた石川県、富山県、新潟県、福井県内の災害救助法適用市町村等に居住する被災者に対し、緊急小口資金の特例貸付(以下、特例貸付)が実施されています。この特例貸付は、都道府県社協が実施主体である生活福祉資金貸付事業の一種に当たります。

特に被害が甚大な石川県内の市町村では、全国の社協職員による応援派遣が行われており、長崎県社協からも全社協及び九州社協連合会からの応援派遣依頼を受けて、特例貸付の申請受付等の活動に職員を1名派遣しました。

支援活動の概要

派遣期間:令和6年2月6日から同月9日までの4日間
派遣場所:志賀町災害ボランティアセンター(石川県志賀町文化ホール内)

活動期間中は、貸付申請と電話相談を3件ずつ受け付けました。
特例貸付は、被災者の当座の生活費を貸し付けることとあわせて、総合的な相談支援を行うことで、被災者を包括的に支えることを目的としています。
総合的な相談支援も目的の一つとしていることから、貸付申請受付のときには、生活の様子やお困りごとを聴かせていただき、必要に応じて、貸付以外の各種被災者支援制度の情報を紹介することもありました。

  長崎県社協 橋口さん

被災地で見聞きしたこと

貸付会場があった志賀町災害ボランティアセンターでは、ボランティアの受付業務を主として、地元住民の方も運営に関わっていらっしゃいました。ボランティアが活動に向かわれる際には、毎回、寒さがしみる駐車場まで出ていき、手を振って見送りをされている姿がとても印象的でした。

お手伝いをされていた地元住民の方にお話しを聞いてみると、「家に一人でいるのが怖いから、災害ボランティアセンターに手伝いに来ている。」という話をしてくださいました。この話を聞いて、災害ボランティアセンターには、共助(助け合いの力)による被災者のための『生活再建支援』という役割だけでなく、被災者にとっての『居場所づくり』、『参加の機会づくり』という役割があるということを改めて認識することができました。

能登半島と地理的に似る長崎県

能登半島は、周りを海に囲まれているという地理的特徴があります。主要道路の寸断や渋滞が多く発生しており、支援物資の運搬のほか、災害車両や支援団体、ボランティアの出入りという点において大きな問題が生じていました。
長崎県は、周りを海に囲まれていたり、離島があったりと、能登半島と地理的な特徴が似ている部分があります。
長崎県内で大規模災害が生じた場合、災害ボランティアセンターの設置・運営という点で考えてみると、主要道路が絶たれたときに、県外からボランティア活動希望者や運営支援者を集めることが困難になるという問題が生じると予想されます。
そのため、長崎県内、市町内のみで支援を行わざるを得ないことも見据え、災害ボランティア支援体制を地域の住民、社会福祉施設・事業所、企業、団体とともに、平時からしっかりと構築していくことが大事なのではないかと考えます。

福祉のプロによる長崎県災害派遣福祉チームで要配慮者を支える(長崎DWAT)

本県では、平成28年熊本地震をきっかけに、平成29年8月に高齢者福祉施設や障害者福祉施設等の各協議会等福祉関係12団体と長崎県において「長崎県災害派遣福祉チーム(以下、長崎DCAT)」に関する協定が締結されました。この協定は災害発生時において、避難所、福祉避難所※や特別な配慮を必要とする者を受け入れる施設に人員を派遣し、高齢者、障害者等要配慮者を支援することを目的としたものです。
【※福祉避難所:高齢者や障害者等避難所での生活に特別な配慮を必要とするものを受け入れる避難所】

令和5年3月には上記12団体と本会・県を構成員として「長崎県災害福祉広域支援ネットワーク会議」が設置され、平時には災害時の役割分担や長崎DCATの活動内容、住民への広報啓発等を協議する場として、また、災害発生時には被害規模や避難所の情報収集、長崎DCAT派遣の検討を協議する場として位置づけられました。(事務局:県福祉保健課)
その後、令和6年1月に前述のネットワーク会議での協議により、長崎DCATは長崎DWATに名称が変更されました。

<協定締結団体>
長崎県、長崎県社会福祉法人経営者協議会、長崎県老人福祉施設協議会、(一社)長崎県老人保健施設協会、長崎県地域包括・在宅介護支援センター協議会、長崎県認知症グループホーム連絡協議会、長崎県授産施設協議会、長崎県身体障害児者施設協議会、(一社)長崎県手をつなぐ育成会、(一社)長崎県知的障がい者福祉協会、長崎県精神障がい者福祉協会、長崎県児童養護施設協議会、(一社)長崎県保育協会

長崎DWATとして初めての派遣

令和6年能登半島地震において、全国の各都道府県DWAT(災害派遣福祉チーム)の派遣調整を行う中央センター(全国社会福祉協議会)より、本県にも初めて派遣依頼がありました。

派遣期間:3月1日から3月28日までの7クール
派遣場所:いしかわ総合スポーツセンター(石川県内にある1.5次避難所※
【※1.5次避難所:高齢者や障害者等配慮が必要な被災者を同伴者とともに被災地外で受け入れる施設】

協定を締結した6団体から23名の役職員が派遣され、他県のDWAT等と連携して、避難所等の要配慮者の福祉ニーズの把握・対応や、避難生活中の生活機能低下を防ぐための支援を行うなど、被災地に寄り添った活動を展開しました。

長崎DWATが支援活動を行った「いしかわ総合スポーツセンター」。避難所用テントが並ぶ。(画像:災害福祉支援ネットワーク中央センター全国研修資料より)

長崎県社協の役割とこれからの取組

本会は、長崎県災害福祉広域支援ネットワーク会議の一員として、本会webサイト等を通じた県民や福祉従事者、養成校学生等への本県DWATの活動紹介、県内での発災に備えた社協関係者との共同研修会の検討など、長崎県DWATとの平時からの連携の構築に取り組んでいく予定です。

災害時に支え合える地域へ

貸付支援活動報告にもあるように、災害ボランティアセンターの設置・運営には、地域住民の居場所づくりという観点も踏まえつつ、地域の力を総結集させる必要があります。
本会では、「“つながりの力”を活動の礎ととらえ、どのような境遇を抱えていても安心して幸せに暮らすことのできる長崎県づくりを進めていく」という基本理念のもと、災害時支援ネットワークの構築に取り組んでいます。

長崎県災害ボランティア連絡会の機能強化

この連絡会は、災害時の円滑なボランティア活動や平常時の防災・減災のための普及啓発活動の効果的な実施、関係団体等との連携促進のために設置されています。
本会は同連絡会を構成する団体の一員かつ事務局として、災害ボランティアの普及啓発とボランティアの育成、市町災害ボランティアセンターの運営支援に努めています。

県内市町社協との災害時相互応援

令和4年度に県社協を含む県内すべての市町社協と互いに応援協定を締結し、災害が発生した際には、被災地の社協に対する職員の派遣や必要な資機材を提供する体制を整備しています。

長崎県災害救援ボランティア資機材ネットワーク事業

令和4年度中央共同募金会からの助成を受け、県内外で災害が発生した際、被災地の社協に必要な資機材を提供するために、東彼杵町内の施設に資機材を保管しています。

長崎県災害ボランティア連絡会、長崎県災害救援ボランティア資機材ネットワーク事業 >

福祉に携わる私たちの使命

災害時に福祉サービスがストップすることは、災害弱者である利用者の生活や生命を脅かすことを意味しています。
また、地域で暮らす方々の困りごとが災害により顕在化することもこれまでに指摘されています。

離島や半島が多く、高齢化・過疎化が進む本県で災害が発生したときに、自らも被災した中でどのように支援を続けるか。どのように支援を受けるか。
その備えを考え・実行するのが平常時です。

本会では、今回ご紹介した取り組みや研修などを通じて、備えのための支援を行っていきます。

投稿日時|2024年6月1日8時55分